8月2日の毎日新聞の記事によりますと、大阪市の

吉村洋文市長は、全国学力テストの結果を

教員の人事評価に反映させるといった案を

検討されているということでした。

 

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【学テ成績結果で教員の人事評価 手当増減を検討】

(冒頭)

大阪市の吉村洋文市長は2日、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の成績が政令市で最下位だった結果を受け、市として学テの数値目標を設定し、達成状況に応じて教員の手当を増減させる人事評価の導入を検討すると発表した。学テの結果を教員の評価に反映させた前例はなく、公正な人事評価を定めた地方公務員法に抵触する恐れもあり、学校現場の反発も予想される。

                   (毎日新聞より)
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Wikipediaによりますと「学テ」とは、1960年代に行われた「全国中学校一斉学力調査」の略らしいので、

私の記事には「全国学力テスト」と書かせていただきます)

 

これは、難しいですね・・・それでは、

今回私が思ったことをお話させていただきますね。

 

①全国学力テストは小学6年生と中学3年生のみに実施

この全国学力テストというのは、小中学校の全生徒に

実施しているわけではなく、小中学校の最高学年のみ

(小学6年生・中学3年生)に実施しているようです。

そのため、

 

この試験の結果だけで

学校全体のレベルを図るにはデータが少なすぎます。

 

例えば、担当する教員の質や生徒との相性によって

「ある学校では、小学3年生は優秀だが、

3年後の小学6年生になると学力が少し下がる」

ということが起きてもおかしくないでしょう。また逆に

「ある学校では、小学3年生の学力は低いが、

3年後の小学6年生になると

学力が全国でも上位にランクする」

ということもありえます。そのため、

 

この試験で測れるのはあくまで

「全国の小学6年生、中学3年生の学力のみ」であって

学校全体の学力とは言い難い

 

ということだと思います。

 

②試験は「国語」「算数・数学」「理科」しかない?

また、試験対象科目も現在のところ

「国語」「算数・数学」「理科」の

3科目のみとなっております

こちらから2018年に実施された試験内容と解答、

試験結果を見ることができます)。

また、こちらの記事によりますと

2019年度から中学校の試験には「英語」も導入され、

文科省によりますと、「社会科」の導入も

検討されているみたいなのですが、
まだ導入されていないということです。

つまり、

 

「全国学力テスト」は、まだ開発途中

 

ということだと思います。まだ、開発途中の

この試験が「学校全体の学力を測っている」とは到底いえません。そのため、

 

現段階のこの試験を使って

学校や教員の評価につなげるというのは、

かなり強引のように思えます。

 

「大学での英語教育」で例えますと、

TOEICという1つの試験のリーディングの点数のみで

「その大学の学生の英語力を評価している」

といった感じですかね。このようなことが起きれば、

大学英語教員からは猛反発が起こるでしょう。

もちろん、「学校や教員の評価につなげるのは

英語と社会の試験が導入されてから」というのが

前提のお話なのかもしれませんが、まだ試験の

内容すら分からない段階で評価の対象にすると

いうのもなんだか違和感があります・・・

 

③一方で全国学力テストには学力を問う問題だけでなく、

 学習・生活環境のアンケート調査もしている。

しかし、全国学力テストは

「国語」「算数・数学」「理科」以外にも

「学校の宿題をしている」

「学習計画を立てて勉強している」

「朝食を食べている」「夢を持っている」など、

学習習慣や生活環境に関するアンケートも

行っているみたいです。(実際のアンケートがこちら

これは非常に重要な気がします。なぜなら、

 

「学力」と「学習習慣・生活環境」との

因果関係を調べることができるから

 

です。これは、

仮説を打ち出すのに重要な役割を果たすでしょう。

しかし、小6・中3でしか、

この試験を行っていないとしますと

その仮説を証明することが難しい・・・

という欠点もあります。

どういうことかと言いますと・・・

 

【例】

茨城県では「国語の能力が高かった多くの

生徒はボランティア活動に参加した経験があった」

という結果が出た。そのため、茨城県では

「学校で積極的にボランティア活動を取り入れたところ

国語の能力が向上した」といったデータが取れた。

 

なんてあったら、おもしろいですよね!

「国語の能力」と「ボランティア活動」といった一見

あまり関係のない2つのものが、実は深い関係があった。

それじゃあ、その関係とは何か?

といった研究もできると思います。

しかし、これは

 

同じ生徒を対象(同じ被験者)に

行わなければ意味がありません。

 

また、期間も小6~中3と成長が著しい3年間ではなく

小5~小6、中2~中3のように

「ボランティア活動」以外の要因を

あまり足せないような短いスパンで行うのが

理想だと思います。

そのため、もし本当に学力を測り、試験の結果から

学力向上を目指すのであれば

 

各毎年で学力テストを行うのがベスト!

 

だと思います。

「それは財政的に無理でしょう」という意見も

あると思いますが、大阪の箕面市では

ステップアップ調査」という独自の調査を毎年

行っているそうです。

これは非常にいいアイディアだと思います。

更に、DIAMOND online のこちらの記事によりますと

 

「ステップアップ調査」を全国で行う場合、

予算は大学無償化の100分の1以下(1%以下)で

すむそうです。

 

これは、やる価値があると個人的には思います。

 

④子供たちの学力をあげたいなら親の意識改革も必要

そして、最後。子供たちの学力をあげたいのであれば

家庭での生活も見直す必要がでてくると思います。

例えば、よく

「勉強ができる子は毎日8時間以上寝ている」とか

「勉強ができる子は、毎朝朝食を食べている」など

家庭での生活で見直せる部分はたくさんあります。

「勉強を教えるのが教員の仕事でしょ?

うちの子の学力が低いのは先生の責任」とするのは

授業以外の業務が山のようにある小中校生の先生には、

あまりにも厳しすぎます。

そのため、全国学力テストのように

「学力テスト」と「アンケート」を上手く利用し、

家庭でも見直せることを洗い出すというのは、

重要のように私には思えます。

 

今回の大阪市の

「客観性が担保されている子供の学力調査を基に

教員評価・学校評価の一部を行う」というのは

決して悪い考えではないと思いますが、
現在行われております「全国学力テスト」では、
まだまだ不十分だという点は否めません。

 

「全国学力テストをどう改善させていくのか?」というのが

これからの課題になると思います。