10月21日に、福岡県で行われた全日本実業団対抗女子駅伝予選会で起きた
ハプニングが話題になっていますね。
第2区、骨折しながらもゴールを目指し、
約200メートルを四つん這いで進んだ飯田怜選手に
いろいろな意見が出ています。

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全国実業団対抗女子駅伝予選会(福岡県)で、
岩谷産業の第2区・飯田怜(19)が残り約200メートルで走ることができなくなり、
四つんばいでたすきを渡したことについて、同チームの広瀬永和監督は、
レースから一夜明けた22日、大会主催者側に
「(レースを)やめてくれ」と伝えていたことを明かした。

(中略)

しかし広瀬監督の意図が主催者側を通じて、
飯田のもとにいくまでにタイムラグが生じた。
結局、飯田は両膝をすりむきながら、3区にたすきを渡す形となった。
広瀬監督はその後、主催者側から
「(監督の意図がコース上の役員に)伝わるのに時間がかかった。
(伝わった時に)あと15メートルで選手(飯田)が動いていたから、
見守ってしまった」と説明を受けたという。

広瀬監督は「主催者側にはそういう意図(レース中止)が
スムーズに伝わる形にしてもらわないといけない」と口にした。

(後略)

日刊スポーツ
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このニュースに関して、「すぐに辞めさせるべきだった」
「なぜ大会側はとめなかったのか?ひどすぎる」という反応があるのですが

 

私は「辞めさせないで良かった」と思っています。

 

その根本的な理由は

 

彼女が四つん這いになってでも
次の走者にたすきを渡すことを選んだから

 

です。彼女は19歳で、立派な社会人。
別に脱水症状が出ていたわけではなく、意識もはっきりしていた。
それにも関わらず、彼女の意思を尊重せずに
「監督や大会側が無理やりにでもやめさせるべきだった」という
話しになるのは、どうも理解できないです。

 

当然のことながら、監督からもも大会運営側も
「レースの中止」は求められていました。
飯田選手に連絡が遅れたということもあったでしょうが、
仮に連絡が届いたところで彼女は
「やめる」という選択肢を選んでいたのでしょうか?
答えは、おそらく「NO」でしょう。

 

考えてもみてください。彼女は「骨折」をしていたのです。
アドレナリンが出ていたとはいえ、かなりの痛みだったでしょう。
おそらく自分でも重症だと分かっていたはずです。
「やめようと思えばそこでやめることもできた。
この痛みなのだから、チームや監督から“何で走るのをやめたんだよ”と
責められることもまずない」と本人も分かっていたと思います。
しかし、飯田選手は前に進み続けた。
おそらく、飯田選手にはこの大会にかける強い気持ちがあったのでしょう。
仲間と一緒にこれまで頑張ってきたため、
自分でそれを台無しにしたくないと思ったのかもしれない。
もしかすると、ずっと楽しみにしていた大会だったのかもしれない。
もしかすると、子供の時から夢に見た舞台だったのかもしれない。
このチャンスを逃したら次がないかもしれない。大けがだと分かっていたから、
長期離脱、あるいは自分にとって最後のレースになるかもしれないと思ったから
「最後までいきたい!たすきを渡したい!」という
一言では表せない、強い様々な思いがあったのだと思います。

 

だから、彼女は四つん這いになりながらもレースを続けたのです!

 

それなのにも関わらず、飯田選手のことを何もしらない
ただ転倒のシーンを見ただけの外野が、彼女の選択を尊重せず
「あれは彼女のことを考えるならやめさせるべきだった」といった発言をするのは
「それは、ちょっと違うのではないの?」と思ってしまいます。

 

当然のことながら、同大会でその後起きた
岡本春美選手の「脱水症状」のような状態だったのであれば
飯田選手も止めるべきだったでしょう。
なぜなら

 

意識が朦朧とし、正常な判断が下せる状態ではなかったから

 

です。しかし、そういう状態ではなかったのですから、
彼女の意思を尊重し、たすきを渡すところまで進めさせてくれて
本当に良かったと思っています。

 

【クレジット】写真:ぱくたそ(www.pakutaso.com)  カメラマン:すしぱく