【書評】ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子供英語 (斉藤淳)
≪内容(Amazon より)≫
★IQ・論理力が高まり、みずから学ぶ子になる!
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★応用言語学、脳科学、教育心理学…科学的根拠(エビデンス)も豊富に掲載!
★“英語ペラペラ”だけでおわらない「学習法&環境づくり」の決定版!!
▼「10歳を過ぎたら手遅れ」ってほんとう?▼
▼なぜ「映像」が最強の学習ツールなのか?▼
▼「国語力」や「成績」もアップする教材は?▼
バイリンガルの姉弟2人を育てた元イェール大学助教授が語る、トップクラスの人気塾で3000人超が実践したメソッド!
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◎なぜ「国語」の点数がまず上がるのか?――知性が磨かれる英語メソッド
「外国語学習の機会が、子どもの知力やIQを高める」
――アカデミックな研究分野では、こうした知見が蓄積されつつあります。
子どもに英語を学ばせたい親御さんたちも、「英語がペラペラになればそれでいい」などとは思っていないはずです。そうではなく、世界のどこでも生きていける頭のよさ、つまり「本物の知性」をわが子に身につけてほしいのではないでしょうか。
実際、著者が代表を務める英語塾では、「英語」よりも先に「国語」の成績がアップする生徒が多いそうです。これは、表面的な知識インプットではなく、「ことばの力」を底上げする「独自の方法」が採用されているからにほかなりません。
本書は、「ほんとうに頭がいい子」を育てたい大人のための
「世界最高の子ども英語学習メソッド」の決定版です。
(後略)
【著者紹介】
斉藤/淳
J PREP斉藤塾代表/元イェール大学助教授/元衆議院議員。1969年、山形県生まれ。イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。研究者としての専門分野は比較政治経済学。ウェズリアン大学客員助教授、フランクリン・マーシャル大学助教授、イェール大学助教授、高麗大学客員教授を歴任。2012年に帰国し、中高生向け英語塾を起業。研究者としては、第54回日経・経済図書文化ほかを受賞した『自民党長期政権の政治経済学』(勁草書房)がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
≪藤井の評価≫
★★★★★★★☆☆☆(7/10)
【評価の理由】
≪良い点≫
(1) 感情や自分の経験だけでなく、
研究に基づいたデータを提供している。
(2) 内容は専門的でも読みやすく書かれている。
(3) 理論だけでなく、どのような方法で
「子供を英語好きにさせるか?」といった方法も書かれている。
(4) 赤字と太字&赤の下線がキーワードや
重要なところで使われているため読みやすい。
≪疑問点≫
(1) 「イェール自慢」「ご自分の塾(J PREP)の自慢・宣伝」に
見えてしまう箇所がちらほら・・・。
(2) 「これ本当?」と思えるところが・・・。
【評価の詳細】
≪良い点1. 研究に基づくデータを提供≫
英語教育やバイリンガル教育の本は、
書店にいけば山のようにありますが、
それらの多くは(少なくても私が見てきた本の多くは)
自分の経験論や感情で書かれているものがほとんど
でした。もちろん、それらが悪いわけではなく
大変参考になるものばかりなのですが、
「あまり科学的根拠がないため、あくまで1つの例」
として捉えるものでした。
しかし、こちらの本は応用言語学、教育学、
心理学、脳科学など様々なジャンルの研究データ・
論文を用いて、「科学的根拠に基づいた英語教授法」を
紹介していますので「さすが元大学の先生だな~」と思いました。
しかも、著書の斉藤氏の専門は「経済学」!!
そうです「英語教授法」ではないのです!!
にも関わらず、畑違いの「英語教授法」の本を執筆され
ベストセラーにしてしまうところがすごい!
「私よりも知識が豊富かも・・・(汗)」と焦ってしまいました。
まあ、イェール大学で指導されていたぐらいですから、
積んでいるOSは違うでしょう。
斉藤氏のOSがWindows 10 だとしたら、私のは
Windows 98 ぐらいかな~。
しょっちゅうフリーズしますから(笑)
≪良い点2. 読みやすい≫
そして読みやすい!研究データや論文はどうしても
読みにくいものがあるのですが、それらを分かりやすい表現にし
伝わりやすく書かれているのが、とても良かったです。
「英語教授法を将来的に学びたい」と
お考えの方には「入門書」としてこちらを読んでいただき、
「お?これ面白そう」と思った論文がありましたら、
実際にその論文を読み、その論文の参考文献などから
更なる論文を読むなどして、知識を広げていく
というのは、いいかな~と思いました。
≪良い点3. 実践方法の紹介≫
そして、「実際にどのように子供に英語を学ばせるか?」といった
具体的な方法まで書いてあるのは良かったです。
方法だけでなく「オススメの教材」も各レベルで
豊富に紹介されており「これを忠実に実践し、
子どももついてくれば、おそらくかなりレベルの高い
英語力をマスターできる」と思います。
紹介されております教材も、手ごろな値段のものも多いため、
「子供に英語を学ばせたいけど、何から始めたら
分からない」という方には、参考になるガイドラインのように
思えます。
≪良い点4. 赤字と太字&赤の下線が上手く使われている≫
また、この本では、読みやすいよう赤字&太字でキーワードが
書かれていたり、重要な文などには
(このブログではできないですが)太字&赤の下線
というように記されています。
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【例】
赤字&太字
1. 第二言語習得(SLA: Second Language Acquisition) (p.11)
2. 環境づくり (p.12)
3. ピクチャーディクショナリー (p.70)
4. モチベーションの維持 (p.78)
太字&赤の下線
1. 特別なスキルも不要です (p.12)
2. 外国語をマスターするためには学習の継続が不可欠だ(p.78)
3. 完璧なバイリンガルに育てる必要はありません (p.116)
4. 子どもが“自分で気づく”のが理想です(p.152)
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そのため、時間がない方は、
これらの部分だけ拾って読むだけでも、
十分な知識が得られると思います。
≪疑問点1. 「自慢・宣伝」に見えてしまう箇所が・・・≫
まず、≪疑問点≫についてお話する前に、断っておきたいのは
私は、斉藤先生の考えに強く共感している。
考え方は素晴らしい!私なんかより、
よっぽど優秀な教育者
というところです。実際に本の売り上げなどは、私の数十倍。
斉藤先生の学歴・経歴、塾(J PREP)の生徒さんの
数などを考えるならば私など足元にも及ばないでしょう
(言っていて悲しくなりますね(泣))。
しかし、生意気ながら、
気づいたことを書かせていただくとすれば・・・
ところどころに「自慢」や「ご自分の塾の宣伝」に
見えてしまう箇所が・・・例えば
【なぜ赤字?】
1. 僕はアメリカ・コネティカット州にあるイェール大学で
研究者をしていました。 (p.3)
【なぜ太字&赤の下線?】
1. 日本でゼロから立ち上げた中高生向けの英語塾は、 わずか4年で累計3000人以上の生徒が
通うまでになっています。(p.3)
2. J PREP 酒田校の講師を務める一人は、~~~。しかし、高校2年生で一念発起して
本格的に英語を学び始めた結果、「国語」など他の成績も急上昇し、
すぐに英検準1級に受かりました。(p.203)
3. J PREPには~もう一人~。彼はなんと全国で最下位という「ビリギャル」も真っ青の点数を
残しました。~~みごと上智大学に入学。現在はアメリカの大学院で
応用言語学を学んでいま す(p.203)
また強調はされていなくても
「J PREPでは・・・」「イェール大学では・・・」
「とくにイェールやハーバードのような一流大学では・・・(p.312)」
といったフレーズがちょこちょこ登場します。
「ハーバード」より前に「イェール」を持ってくるところもまた(笑)
ハーバード大学:6位
イェール大学:12位
東大:46位
でした。いやいや、イェール大学はすごいですよ!
東大なんかよりはるかに高いですから!
しかし、この本で「J PREPでは・・・」「イェール大学では・・・」
「とくにイェールやハーバードのような一流大学では・・・」という
情報は、重要なことが頭に入って来なくなるので、不要な気がしますね。
そして、最も驚いたのは「同時通訳者のマネでは、英語力は伸びない。
日本語脳と英語脳を行き来する必要はない。
英語脳を作ってしまえば、英語で学んだ成果がゼロに
戻ってしまうことはない」と説明しているところに、なぜか
「イェール大学総長(当時)と小泉純一郎首相(当時)の
通訳を務める著者の写真(p.126)」が・・・・
斉藤先生、これいりますか?
本文と全くと言っていいほど関係のないこの写真を載せた理由は
「自慢」以外に何があったのか私には思いつきませんでした。
論文ではこういった「不要なコメント」「不要な写真」などは
載せないことが多いだけに、この本では「読みやすい反面、
不要な部分もちょこちょこあるな~」といった印象でした。
≪疑問点2.「これ本当?」と思えるところが・・・≫
また、これは私が違っていたら申し訳ないのですが、
「これ本当?少なくても私が認識とは違うな・・・」
というところがあったので、紹介しますね。
「世界で通用する人とは?」というエピローグの部分です。
アメリカの教育について書かれているのですが、
アメリカの教室では「他者に貢献する力」を
評価しているとか(p.314)
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実際、アメリカの教室では「ほかの生徒の学びへの貢献度」を評価する文化があります。
たとえ生徒の意見が間違っていても、それがほかの学生の学びにとってプラスになれば、
先生は必ず「Thank you. Very good. You are getting there.」などと
答えます。学生たちも「これはほかのみんなのためになるはずだ」と信じているので、質問をすることをためらいません。先生も当然「Good question!」と言います。これは質問の切り口が「すばらしい」という以前に、みんなの理解を深める機会をつくっていることが「すばらしい」のです。
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確かに、アメリカの教室では質問やディスカッションなどが
頻繁に行われますが、
これは「ほかのみんなのためになるはずだ」という考えというより
「自分はこう思う!」という自己主張の文化の表れのように
私には思えます。「他の人のために質問する」と考える学生も
いるとは思いますが、少数派なのでは・・・
おそらく、そこまで考えていない学生がほとんどでは(笑)
それこそイェール大学では違うのかもしれません。
しかし、(斉藤先生のおっしゃる)
同じ一流大学の「ハーバード」ではどうなのでしょう?
あくまで一例ですが
少し前に流行ったマイケル・サンデル氏による
「正義についての授業」をご覧いただければ良いかと思います。
(こちらのシリーズはYouTubeで無料でご覧いただけます)
う~ん・・・私には、これらの発言は
「他人のことを考えての発言」には見えません。
むしろ、自分の意見を述べて、ディスカッションを楽しんでいる
(つまり「自分のため」)といった印象がありますが・・・
みなさんは、どう思われますか?
また、斉藤先生はp.314に
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アメリカの大学を受験する際に「推薦状」が求められるのも、「この学生は学問を通じて他者にどれだけ貢献できる人材なのか」が問われているからです。そして、「この学生は周囲にポジティブな影響をもたらすだろう」と見込まれたときに、初めて入学を許可されます。
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と書かれていますが・・・本当ですか?確かにアメリカの場合、
大学(院?)を受験する際、「推薦状」が必要となりますが、
それは
「学問」だけでなく
「学問以外の点はどうなのか?」ということを
別の人の視点から評価してもらうため
だと思います。具体的には
1. 協調性があるか?
2. ボランティア活動などはしているか?
3. リーダーとしての素質を持っているか?
4. (学生なら)クラブ活動などは行っているか?
5. (社会人なら)仕事をテキパキこなすか?
などです。つまり「勉強以外の評価」というのが根本であって
「学問を通じて他者にどれだけ貢献できる人材なのか」
というのは深読みのように思えます。
上記の文章を読みますと
「斉藤先生はアメリカの大学入学選考に関わったことがある。
しかも、かなり広範囲で関わっていたため、このように断言できる」
というのが私の認識なのですが・・・
これでアメリカの大学入学の選考に
ほとんど関わったことがなかったのであれば、
かなりの驚きです。ちなみに、私はアメリカの大学入学の
選考に関わったことが全くないので、何が正しいかは
分かりません。あくまで「予想」です。
≪まとめ≫
いろいろと書かせていただきましたが、まとめますと
・この本は「英語教育に関心のある方」にはオススメ。
・しかし、ちょっと気になる点も、ちらほらある。
といったところです。最後に・・・p.310に
斉藤先生が書かれた以下の言葉
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ここで、僕が普段から J PREPの生徒にかけている言葉を
紹介したいと思います。
・高校生のあいだに、大学生のように本をよみなさい。
・大学生になったら、大学院生のようにレポートを書きなさい。
・大学院生になったら、世界の最先端に身をおきなさい、
つまり留学しなさい。
・2つ以上の専門を身につけ、世の中に新しい価値を提供できる
人間になりなさい。
・大学入試の点数くらいしか自慢するものがない大人には
ならないでください。
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素晴らしいですね!この言葉に、(生意気にも)
私から以下の言葉を足させていただき
おしまいにさせていただきます。 m(_ _)m
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・世界を知ることで
「勉強以外にも世の中には素晴らしいものがある」ということを
実感してください。
・「過去」ではなく「今」を生きてください。
・「学歴」や「業績」など、いつまでも過去の栄光しか
自慢できない大人にはならないでください。
・そして後悔しない生き方をし、自分の「人生」を楽しんでください。
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