【書評】16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える
              「賢い子」に育てる究極のコツ(瀧 靖之)

≪内容(Amazon より)≫

本書は、16万人の脳のMRI画像を解析・研究してきた瀧靖之先生による、脳の力を最大限に伸ばす子育ての本です。

世界最先端の脳研究から、「ぐんぐん伸びる子」と「そうでない子」の差が見えてきました。「頭のいい子」「能力の高い子」は皆、好奇心のレベルが他の子どもより高いのです。
好奇心を伸ばすコツは、たったの3つ。「秘密道具1 図鑑」「秘密道具2 虫とり網」「秘密道具3 ピアノなどの楽器」を子供の成長に合わせて取り入れていくことで、その子は学ぶことや知ることがもっと大好きになり、脳はみるみる賢く育っていきます。さらに脳の発達に合わせた習い事で、芸術的センスや運動能力・語学力も伸びやすくなります。

そんな、科学に基づいた子育て法ですが、瀧先生ご自身も、その方法で息子さんを育てている真っ最中。自身の体験の中で編み出した、脳にいい習慣の取り入れ方のアイデアも満載です。
そんな「脳医学者の子育ての知恵」をあなたの家庭でも取り入れてみませんか?

 
【著者紹介(Amazon より)】
瀧靖之(たきやすゆき)
1970年生まれ。医師。医学博士。
東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。
東北大学病院加齢核医学科長としての画像診断、東北大学加齢医学研究所で脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIはこれまでに16万人にのぼる。「脳の発達と加齢に関する脳画像研究」「睡眠と海馬の関係に関する研究」「肥満と脳萎縮の関係に関する研究」など多くの論文を発表。学術誌はじめ新聞・テレビなど、マスコミでも数多く取り上げられ注目を集めている。
 
≪Amazonカスタマーレビューはこちら

 

≪藤井の評価≫

★★★★★★★☆☆☆(7/10)

 

【評価の理由】

≪良い点≫

(1) 大切なところは赤字になっているため、読みやすい。

(2) 子育てのポイントが分かりやすく書かれている。例えば

   a. 好奇心

         1. 脳全体を成長させやすくする。

    2. 認知症を防ぐ効果が期待できる。

   b. 幼い時にやっておきたいことは

    1. 図鑑を与える。

     2. 「図鑑」と「リアル」をつなげる。

    3. 音楽に触れさせる。

   c. 年齢ごとに合った習い事がある。

   d. 親の主な役割は

    1. 好奇心の種をまくこと

    2. (子供の)背中を押してあげること

     e. 睡眠・朝食・運動は重要

     f. ゲームは遠ざけるのは逆効果。

    「他に楽しいことがある」ということを子供に

    教えるのがよい。

 

≪注意点≫

(1) 脳科学からの観点で書かれている箇所はそこまで多くない。

  (専門的なので、あえて端折っている?)

(2) 他の育児書や育児に関する記事にも

  書かれていることが多い印象。
(3) 「ゲーム・スマホ・・・『してほしくないこと』をやめさせる方法」
  というセクションがあり(p.208)
    「ゲームとの付き合い方」については
  書かれているが「スマホとの付き合い方」については
  ほとんど書かれていない。
(4) タイトルの「究極のコツ」は言い過ぎなのでは?
 

【評価の詳細】

≪良い点≫

育児書はいろいろとあるが、脳医学者が書いている

育児書は少ないと思い、読んでみることに。
まず、何より思ったのは
 
非常に読みやすい
 
ということ。脳の仕組みについての説明は
ちょこちょこ登場するのですが、
難しい説明はほとんどありません。
「海馬」「前頭葉」「後頭葉」などどこかで
聞いたことがあるものもあれば「可塑性(かそせい)」
「錐体路(すいたいろ)」といったあまり聞きなれないものも
ありますが、
 
基本的に専門用語には本文で説明がせれているので
専門知識がない方でも読むのに
そこまで苦労はしないでしょう。
 
そんなこともあり、おそらく読むのが速い人なら、
半日もあれば読み終えてしまう気がします。
また、大切なところは赤字で書かれていますので
「本を読む時間があまりない方」や
「立ち読みで十分」という方は、
 
この赤字だけを読んでも十分内容が理解できる
 
と思います。
また、上記でまとめたように、「育児のポイント」が
上手くまとめられているので、頭にも残りやすいと思います。
 

≪注意点≫

しかし、

 

「他の育児書とあまり変わらない(内容が薄い)」

という点は否めない

 

ところでもあります。もちろん、これは、専門書とは違うため、

あえて難しいところは端折って書かれているのかもしれませんが

「育児書を何冊も読んでいるけど、

脳科学からの観点はどうなのか?」といった

 

「脳科学に特化した本」を期待して

読まれると期待外れになる可能性が高い

 

です。違う言葉で言えば「他の育児書や育児に関する記事」

に書かれている内容のものが多いです。

例えば、

 

1. 図鑑を買い与えましょう。

2. 好奇心を育てましょう。

2. 音楽を習わせましょう。

3. 睡眠はしっかりとりましょう。

4. 朝食は食べましょう。

 

といった、テレビなどでも繰り返し放送されているものが

多かった気がします。

 

また、この本では
「ゲーム・スマホ・・・『してほしくないこと』をやめさせる方法」

という箇所はp.208にあり、

 
「ゲームとの付き合い方」については書かれているのですが
「スマホとの付き合い方」については
ほとんど書かれていません
 
 
でした。今ではゲームよりも
やはりスマホの方が子育てには大きな影響を与えている印象が
ありますね。大人でも中毒者が山のようにいるスマホ。
これは、かなり危険です。
 

この議論の難しいところはSNSやLINEなどでの「いじめ」に

発展する可能性もあるため

「それならスマホを買い与えなければ良い」ということには

なかなかつながらないという点にあります。
高校生以上の子供でスマホを持っていない人は
いったい何人いるのか・・・MMD研究所のデータによりますと
 
高校生のスマホ所有率は2016年の時点で93%。
 
またKDDIの調査によりますと中学生でも所有率は
 
中1 = 35%
中2 = 52%
中3 = 48.5%
 
となっています(なぜ「中2」の方が「中3」より高いのか

興味がありますが・・・)。

 
このような背景があるため、著者が「脳医学者」
(認知症が専門だということですが・・・)なのであれば
「スマホ中毒によって起きる脳への悪影響」などを本書で
取り上げ、メディアであまり取り上げないような情報を
載せていただくことで、
「どうやったら子供のスマホ中毒を回避できるか?」
といった指導方法なども紹介してもらえたら
「他の育児書と差別化を図る」という意味でも
更に良かったかな~と思いました。
 
以上をまとめますと、タイトルの
「究極のコツ」は多少言い過ぎなのではないかな・・・と
思いました。いうならば
 
 
「抑えておきたいコツ」
 
 
ぐらいでしょう。
 
しかし「育児の入門書」としては、非常に良い本だと思います。
特に幼いお子さん(0~5歳ぐらい)をお持ちで、
「しっかりした教育をしたいけど、
どういった教育をするべきなのだろう?」とお考えの
教育熱心な方にはオススメですね!