【タイトル】
いじめのある世界に生きる君たちへ
― いじめられっ子だった精神科医の贈る言葉 (中井久夫)

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≪内容(Amazon より)≫
本書は、2011年10月に滋賀県大津市で市立中学の男子生徒が自殺をした「大津いじめ事件」の第三者委員会報告書に引用された、中井久夫氏の『アリアドネからの糸』(みすず書房)の「いじめの政治学」を小学校高学年から読めるよう、再編集したものです。「大津いじめ事件」は「透明化」の段階だったとされています。

(中略)

「いじめをなくせ」というのは簡単でも実現するのは不可能。82歳、自身をもいじめられっ子だった日本を代表する精神科医が、「翻訳者」を付け、名著「いじめの政治学」を小学生以上に書き下ろしたメッセージです。中井氏は「子どもの社会が権力社会である」としいじめを「孤立化」「無力化」「透明化」の三段階に分けました。「いじめられても、逃げる、死なない」ために、子どもたちに、やさしく、大切な情報を的確に伝え、サバイバルのきっかけをつかんでほしいと作った1冊です。

そして、親や教師、子どもの近くにいる大人たちが、いじめを軽く見ず、子どもたちのメッセージを見落とさず、真剣に向き合うための必読の書でもあります。

小学6年生で読めない漢字にはすべてルビを振っており、いわさきちひろさんの画を添えているので、親子で読んだり、親が子どもに贈ることもできます。

【著者紹介(Amazon より)】
中井/久夫
1934年奈良県生まれ。精神科医。京都大学医学部卒。神戸大学名誉教授、甲南大学名誉教授。1985年芸術療法学会賞、1989年読売文学賞『ガヴァフィス全詩集』(翻訳研究賞)、1991年ギリシャ国文学翻訳賞、1996年毎日出版文化賞『家族の深淵』など。2013年文化功労者(評論・翻訳)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

≪Amazonカスタマーレビューはこちら

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≪藤井の評価≫
★★★★★★★★☆☆(8/10)

【ポイント】
(1) 短くて読みやすい(約100ページ。小6から読めるよう、ルビが振ってある)
(2) いじめに発展するまでの基本的な流れが分かり易く説明されている。
(3) いじめの「加害者の心理」と「被害者の心理」がよく説明されている。
(4) 教員だけでなく、親、子供たちなど、みんなが1度は読むべき本。
(5) しかし、1,200円はちょっと高いかな・・・

【詳細】
「この世からいじめをなくすのは不可能」というのが私の基本スタンス。
そのため、我々が話し合うべきことは、
いじめが起きることを前提とし

「どのようにいじめをなくすか」ではなく
「どのように、いじめを見つけことが大きくなる前に解決するか」

なのだと考えられる。しかし、普遍的な「いじめが起きる理由」などというものは
基本的に存在しない。いじめが起きる学校環境、家庭環境、
子供たちの質、土地柄など、様々な理由が複雑に絡み合って
おきるのが「いじめ」というものだ。だからこそ、
いじめを見つけ解決することは難しいのだが、
ある程度「共通する点」もいくつかある。

<例>
・いじめかどうか見極める方法
→「立場の入れ替えがあるか否か」で判断する

・いじめる方法を教えているのは家庭や学校の可能性も
→ 先生や親の子供を脅す表情や殺し文句、子供への態度等を子供たちは真似する。

・いじめの順番:「孤立化」「無力化」「透明化」
→ ステージ1 孤立化:いじめる相手をPR。「いじめられても仕方ない」と周りに思わせる。
→ ステージ2 無力化:言いがかりなどで暴力を振るう。                            子供たちは大人に「気づいてよ」というサインを送ることもあるが、             気づかない大人が多い。
→ ステージ3 透明化:繁華街のホームレスのようなもの。周りの人たちが「日常の一部」と捉え           気づかなくなる。周りの責任もあるが、被害者も「抵抗しても無駄」と            思うようになりいじめが透明化する。

 

こういう「いじめのメカニズム」を理解できるだけでも、
こちらの本は非常に良かったと考えらえる。
これを基に、いじめが判明した場合は「いったいどのステージなのか?」
「どういう手立てを打つべきなのか?」を検討できるのではないだろうか。

そして、最後。「教員だけでなく、両親など周りの大人が
いじめに気づいた場合はどうするべきなのか?」
我々が被害者にできることは

・安全の確保
・孤立感の解消
・2度と孤立させないという大人の責任ある保障の言葉

と著者は研究者ジュディス・ハーマン氏の言葉を借りて説明している。
私も「中学の時いじめられた時はこういうことをしてもらいたかった・・・」と
ふと思い出してしまった。

もし仮に、ご自分のお子さんが、いじめの被害者だと分かった場合、
思いっきり抱きしめて「もう大丈夫だよ」と伝えてあげてください(安全の確保)。
決して「お前に根性がないからダメなんだ」「お前にも責任がある」など責めてはいけません。
そして「一人じゃないから。いつも一緒だよ」とお話し(孤立感の解消)、
最後に「もう二度とこんな思いをさせないからね。約束」と声をかけ、
もう一度強く抱きしめてあげてください(保障の言葉)