本日で相模原障碍者殺傷事件から半年。
ニュースでもいろいろと話題になっています。
犯人の植松聖容疑者は今も「障碍者はいなくなればいい」などと
供述しているそうです。この犯人に罪の意識は全くないのでしょう。
本当に信じられない話です。

しかし、産まれる前の「障碍者」なら命を奪ってもよいのか?
(中絶してもよいのか?)非常に難しい話ですが、
そのようなことを前のブログでもお話していたので、
ここに掲載させていただきます。

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昨日、AIの普及によって
「人間の概念が脅かされている」といった

お話をさせていただいたが、評論家である宮崎哲弥氏は
「人間という概念を脅かす別のものがある」
というお話をニッポン放送の「ザボイス」という
ラジオ番組でされていた。
その「別のもの」とは・・・「生殖医療」である。
今回は宮崎氏のお話を中心に
「生殖医療という観点から脅かされる人間の概念」

といったテーマでお話をしていこうと思う。

 

まずは、質問から。
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Q:みなさんは、「障碍者」の方々は「生きるに値しない」と
お考えですか?(つまり「障碍者の方々は生きる価値がない」と
お考えですか?)

【補足】
こういう質問をすると「障碍の度合いにもよる」という
意見も出てくると思うので、ここでは
「一人では生きていくことのできない、
比較的重度の障碍者の方々」としましょう。
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おそらく、この質問に「はい」と答える方
(つまり、障碍者の方は生きる価値がないと考える方)は
極めて少ないのではないだろうか? 客観的なデータはないが
「たとえ障碍があったとしても産まれてきてくれた
その命を大切にするのは当然」と
考える方が大多数だと私は考えている
(もし違っていたらどなたか
教えていただけると幸いですm(_ _)m)。

例えば、昨年の7月に起きた「相模原障碍者施設殺傷事件」。
この事件では、障碍者の方がターゲットとされ、
19人が死亡、26人が重軽傷を負うという
第二次世界大戦後の日本で発生した殺人事件としては最も多い
事件となってしまったが、犯人は
「障碍者は生きる価値がない。養うのは税金の無駄」という
考えから犯行に至ったと言われている。
また捜査関係者によると犯人は
「障碍があって家族や周囲も不幸だと思った。
事件を起こしたのは不幸を減らすため。
同じように考える人もいるはずだが、
自分のようには実行できない」とした上で
「殺害した自分は救世主だ」「(犯行は)日本のため」などと
供述しているという。

 

さて、この事件の概要を聞いて
「この犯人に共感できる」という方は
いったいどれくらいいるだろう?

かなり少数なのではないだろうか。
おそらく多くの方は「なんてひどい奴なんだ!

絶対に許せない!」と
考えると私は予想している。つまり多くの方は
「障碍者の方の命だって生きるに値する命」

と考えていることになる。

 

しかし、興味深いことに「生殖医療」という観点から考えると
この理論が破たんする一面が出てくる。
みなさんは「出生前診断」というものをご存知だろうか?
出生前診断とは、胎児に先天性の病気、
奇形、染色体異常がないかどうかを

調べる検査の総称のことである。
実は、この出生前診断は日本では

2013年から導入されているのだが・・・
この約3年の間に、検査で異常が確定した
(つまり胎児に何らかの障碍があると確認された)
妊婦の何%が中絶を選んだかご存じだろうか?
答えは・・・96.5%!!(346人中、334人)
これだけ高い数字となっているのである。
(詳しい記事はこちら

つまり、彼らは「何かしらの障碍があるのなら

子供を産みたくない」と
判断したことになる。更に結果だけ見て、
誤解を恐れずに言えば「障碍のある人は生きるに値しない」と
判断したことになる。

 

別に中絶を選択した親を責めるつもりがあって
こういうことを言っているのではない。中絶を選択した方々にも
確実に「正義」はあったと私は考えている。
中絶という選択をするにあたっては、

本当に考えて、考えて、

考え抜いた結果の答えなのだろうから、
本当につらい思いをしたのだろう。
考えるだけでも胸が苦しくなる。
しかし、この理論の「矛盾」は
いったいどうして生まれたのだろうか?
この点を理解するのは非常に難しい。

 

今後も生殖医療の技術は進化を続けていくだろう。
出生前診断が更に進むと、親が子供の性別であったり、
容姿であったり、運動神経などを選べる・・・そんな日が
来るかもしれない。そのような時代が来た時、
我々は「人間」というものを

どう考えるようになっているのだろうか?
いったい何をもって人間なのだろうか・・・
もうガンダムSEEDの世界ですね(苦笑)
(ガンダムSEEDでは、

「遺伝子操作で生まれた優秀な人たち」と
「そうでない人たち」との対立から描かれている)。

世界は人間の手によって
より複雑になっている気がします。